大動脈解離シンポジウム 大動脈解離シンポジウム

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=開催報告=
第2回大動脈解離シンポジウム

「第2回大動脈解離シンポジウム」が、2014年3月8日(土)横浜ローズホテルにて、第2回大会長 上田 敏彦 先生(東海大学医学部外科学系心臓血管外科学教授)のもと開催されました。 こちらでは、大会長挨拶、開催案内、当日の会場風景写真、演題抄録、プログラムなどを掲載しています。ご参照ください。

大会長挨拶  開催案内パンフレット  会場風景  演題抄録  プログラム(タイムスケジュール含)

大会長

井元教授をはじめ、幹事の皆様のご協力により、第1回大動脈解離シンポジウムは開催され、横浜中華街で内科・外科・放射線科等様々な視点から大動脈解離に関する問題点を討論する機会が得られました。今回は2回目ということで、僭越極まりないとは知りながら私が企画させていただきました。特に、現場でヨルドニッチに悪戦苦闘されている先生方の知見を報告して頂き、この厄介な疾患を如何に退治していくか、改めて考えるシンポジウムになればいいと思っています。熱い討論の後は北京ダックで一杯やりましょう。


第2回プログラム


第2回会場風景1

第2回会場風景2

第2回会場風景3

第2回会場風景4


■急性大動脈解離と突然死

榊原記念病院病理・東京都監察医
村井 達哉

 東京23区内で発生した異状死を取り扱う東京都監察医務院では、年間に13,000-14,000体の死体検案を行い、うち3,000体弱に行政解剖が施行されている。最近の剖検記録および死体検案記録を検討したところ、急性大動脈解離による突然死例は、行政解剖例で年間70-80例、死体検案のみの例で年間200例程度に認められた。剖検例では以前の報告と同様にStanford A型解離の心嚢内破裂が大半を占めたが、DeBakey分類では以前の報告とは逆にI型がII型をやや上回っていた。


■血栓閉塞型大動脈解離とUlcerlike projection〜大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2011年改訂版)を踏まえて

日本医科大学 放射線医学
林 宏光

 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2011年改訂版)において、大動脈解離の偽腔血流状態による分類として、従来からの偽腔開存型、偽腔閉塞型に『ULP型』が追加された。新たにULP型が追加された理由は、ULPを伴う大動脈解離は、そのサイズにかかわらず病態が不安定な例も含まれているため、臨床的に重要であることによる。ULPは偽腔閉塞型解離の86%で認められ、大動脈のみならず解離が波及した主要分枝においても認められるが、特に上行大動脈、遠位弓部、横隔膜近傍の胸腹部大動脈に認められた場合には、瘤形成や限局性二腔解離を生ずる可能性があり、十分な注意が必要である。またULPの変化の可能性を知るためには、偽腔内血栓化状態の評価が重要である。


■A型偽腔閉塞型急性大動脈解離の予後

神戸市立医療センター中央市民病院
加地 修一郎

 A型偽腔閉塞型大動脈解離に対して、偽腔開存型解離と同じように緊急手術を施行するべきかどうか議論がある。欧米から報告されているA型偽腔閉塞型解離の内科治療の成績は不良で、緊急手術を優先するべきであるという意見が強い。しかしながら、本邦や韓国から、注意深く経過をみる内科治療(Watchful waiting)により、良好な治療成績が報告されている。ただし、大動脈径が50mm以上あるいは閉塞した偽腔径が11mm以上の例は内科治療中に解離が進行する率が高く、高危険群と報告されている。高危険群をどう治療するかも含めて、A 型偽腔閉塞型解離の治療方針については、今後も検討が必要である。


■急性A型解離の基部形成と生体糊 - 使用法と仮性瘤形成の因果関係は ? @GRF glue

慶應義塾大学 外科(心臓血管)
志水 秀行

 急性大動脈解離手術におけるGRF glue使用例の早期・遠隔成績をRetrospectiveに検討した。末梢側に関しては特に全弓部置換例で良好な偽腔閉鎖が得られた。中枢側に関しては、基部置換例以外でGRF glueによる偽腔閉鎖と3交連固定を行った。遠隔期の中枢側追加手術は2例のみ、ARに関しても良好な結果であり、GRF glueは有用であった。ただし、文献的にはFormaldehydeを過剰投与に関連した遠隔期合併症の懸念もあり、その使用に際しては、適正使用(量)の徹底と厳重な遠隔期フォローアップが重要と考えられた。


■急性大動脈解離におけるフィブリン糊を使用した大動脈基部修復法の成績

横浜市立大学附属市民総合医療センター
内田 敬二

 2003年GRFグルー使用中止以降、A型急性大動脈解離手術321例においてフィブリン糊による基部修復を291例91%に施行した。これは大動脈基部外膜を積極的に剥離、STJ直上まで解離大動脈壁を切除、フィブリン糊により偽腔接着、バルサルバ洞を解離発生前の形態に戻し、STJをテフロンフェルトで補強、という方法である。手術死亡率は8.1%、術直後AR moderate以上残存は2%であった。遠隔成績は平均観察期間3.9年で基部仮性瘤は1例も発生せず、AR moderate以下が97%である。


■急性A型大動脈解離周術期重篤脳合併症患者の遠隔期ケア

東海大学 医学部外科学系 心臓血管外科学
志村 信一郎、長 泰則、秋 顕、古屋 秀和、田中 千陽、尾澤 慶輔、永瀬 晴啓、上田 敏彦

 急性A型大動脈解離周術期脳合併症患者の遠隔期予後を、退院時および最終観察時においてModified Rankin Scale (MRS) により評価し分析した。対象は2007年4月より2013年12月までに施行した急性A型大動脈解離に対する直達手術107例中生存退院94例のうち、周術期脳合併症を有した13例。退院後平均観察期間は29ヶ月。退院先の内わけは、回復期リハビリテーション病院6人、療養型病院3人、自宅退院3人、一般病院(リハビリテーション有)1人だった。療養型病院転院3人は死亡の転帰となったが、それ以外では全てMRSが改善しており、統計学的有意差(p<0.01)を認めた。退院後の積極的リハビリテーションが遠隔期ADLを向上させると考えられた。


急性B型解離に対する手術適応と術式―Complicated type Bに対する血管内治療―

横浜市立大学附属市民総合医療センター 心臓血管センター外科
井元 清隆

 1994年から2011年までの急性B型解離294例中80例に破裂(30例)およびmalperfusion(50例)を合併2009年からは積極的に血管内治療を施行。破裂例の在院死亡率はステントグラフトとopen surgyで0/9(0%)、2/14(14.3%)と差はなかったが、呼吸器合併症は0%、35.7%、re-intervention 33.3%、0%と有意差を認めた。最近のmalperfusion症例はステントグラフトによるcentral repair、末梢血管へのステント留置、カテーテル開窓術で治療可能で、比較的良好な成績が得られた。Complicated acute type B aortic dissectionでは破裂症例の一部を除き、血管内治療により良好な結果が期待できる。


Stanford B型急性大動脈解離;腹部内臓虚血の診断とIVR

聖マリアンナ医科大学 外科学(心臓血管外科)
西巻 博

 Stanford B型急性大動脈解離に伴った腹部内臓虚血(以下,本症)は臨床症候,血液検査所見,CTを中心とする画像所見から総合的に診断される.具体的には下半身虚血症状を伴うことが多く,AST/ALT値高値, LDH高値,代謝性アシドーシス,乳酸値高値,CT所見でcrescent sign, 腹部分枝への解離の進展,実質臓器の虚血性変化.梗塞などがあげられる.腹部内臓虚血を呈した場合には,急性期でendovascular fenestration, 慢性期ではTEVARによるprimary entry閉鎖が提唱されていたが,近年では急性期においてもTEVARを行い,static obstructionが残存した場合には分枝血管にステント留置,開腹バイパス術が追加することが推奨されつつある.


■急性解離腹部臓器虚血の診断と治療 A手術

春日部中央総合病院 心臓血管外科
安達 晃一

 急性大動脈解離では術前から臓器虚血症状を伴っている症例の手術成績は一般に悪く、それに循環の虚脱による全身の虚血が伴うとさらに悪くなる。なかでも腹部臓器虚血、特に腸管虚血を併発する解離はA型解離の約4%ほどであるが、その治療成績は著しく悪い。臓器虚血症状を伴う解離の治療方針は、@人工血管置換術やステントグラフト挿入術によるエントリー閉鎖を行うことになり偽腔へ流入する血流を遮断する治療、Aバイパス作成やステント留置などによって虚血に陥っている分枝に直接血行再建する治療、B偽腔と真腔の圧を均衡させて、偽腔による真腔圧迫を解除する開窓術の三つの選択肢がある。A型解離の場合は上行大動脈置換術などの初期治療によって既にエントリー切除されている症例が多く、追加の血行再建術などを要する症例は少ないが、基本的にエントリー切除を行わないB型解離ではこの分枝の血流障害が治療上問題になることが多い。しかしながら、過去に経験した腹部分枝への血行再建術症例は1〜2年に一例程度しかないことが多く、経験の蓄積が不十分であるため、迅速な対応をとることが困難で、手術のタイミングを逸してしまい失う症例が多かった。一方、開窓術を選択する場合は、手技上、バイパス追加よりも簡便に行うことができるため、試験開腹を兼ねて開腹手術を開始し比較的迅速に決断して治療開始できる症例は成績も良好である。開窓術を行って、まだ血行再建が不十分な場合は同一手術内にバイパス追加も可能である。的確な診断と、迅速な判断、血行再建術が救命へのカギとなる。近年はステントグラフト内挿術や、血管内治療による開窓術、分枝血管へのステント留置による真腔の開大など、血管内治療が急速に広まっており、血管造影と同時に行うことで診断と治療がリアルタイムで行える症例も増加している。これらの治療を集学的に迅速に組み合わせることが治療成績を向上させることになる。


■慢性B型解離性大動脈瘤の治療方針と成績 A手術

札幌中央病院 心臓血管外科
川原田 修義

 偽腔開存型慢性B型大動脈解離(communicating chronic type B dissection :以下CCTBDと略す) の治療として血管内治療にてentry閉鎖するだけでは、re-entryからの血流により偽腔拡大による破裂のリスクを回避できない。この発表ではCCTBDの治療としてCrawford II型の置換(15例)とopen proximal anastomosisとしての下行大動脈置換(20例)の成績を報告する。CCTBDの手術は若年者が多く、十分open surgeryに耐えられるため、成績は良好であり、血管内治療が増加した現時点でもCCTBDに対してはopen surgeryを第一選択とすべきである。

12:00〜  受付開始

12:00〜12:30  幹事会 (30分)

12:30  開会のご挨拶 (5分)

12:35  【1】 急性大動脈解離の real world

@ 「急性大動脈解離と突然死」 11分発表(12:35〜12:46)/ 村井達哉 榊原記念病院病理

11分討論(12:46〜12:57)

A 「急性大動脈スーパーネットワークの近況」 11分発表(12:57〜13:08)/ 吉野秀朗 杏林大学医学部付属病院循環器内科

11分討論(13:08〜13:19)

司会 圷 宏一 日本医科大学付属病院循環器内科

13:19  【2】 早期血栓閉鎖型とは:その診断と予防

@ 「血栓閉鎖型大動脈解離とULP」 11分発表(13:19〜13:30)/ 林 宏光 日本医科大学放射線医学

11分討論(13:30〜13:41)

A 「早期血栓閉鎖急性A型の予後」 11分発表(13:41〜13:52)/ 加地 修一郎 神戸市立医療センター中央市民病院循環器内科

11分討論(13:52〜14:03)

司会 高本 眞一 三井記念病院

14:03  【3】 急性A型解離の基部形成と生体糊 - 使用法と仮性瘤形成の因果関係は

@ 「GRF-glue」 11分発表(14:03〜14:14)/ 志水 秀行 慶應義塾大学病院心臓血管外科

11分討論(14:14〜14:25)

A 「Fibrin-glue/Bio-glue」 11分発表(14:25〜14:36)/ 内田 敬二 横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター

11分討論(14:36〜14:47)

司会 上田 敏彦 東海大学医学部外科学系心臓血管外科学

14:47〜14:57 コーヒーブレイク (10分)

14:57  【4】 急性A型大動脈解離周術期脳合併症の対策と重篤患者の遠隔期ケア

@ 「周術期脳合併症とその対策」 11分発表(14:57〜15:08)/ 築部 卓郎 神戸赤十字病院心臓血管外科

11分討論(15:08〜15:19)

A 「重篤脳合併症患者の遠隔期ケア」 11分発表(15:19〜15:30)/ 志村 信一郎 東海大学医学部外科学系心臓血管外科学

11分討論(15:30〜15:41)

司会 安達 秀雄 自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科

15:41  【5】 急性期B型解離の手術適応と術式

@ 「TEVAR」 11分発表(15:41〜15:52)/ 井元 清隆 横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター

11分討論(15:52〜16:03)

A 「手術」 11分発表(16:03〜16:14)/ 山本 晋 川崎幸病院大動脈センター

11分討論(16:14〜16:25)

司会 荻野 均 東京医科大学心臓血管外科

16:25  【6】 急性解離腹部臓器虚血の診断と治療

@ 「診断とIVR」 11分発表(16:25〜16:36)/ 西巻 博 聖マリアンナ医科大学病院心臓血管外科

11分討論(16:36〜16:47)

A 「手術」 11分発表(16:47〜16:58)/ 安達 晃一 自治医科大学付属さいたま医療センター心臓血管外科

11分討論(16:48〜17:09)

司会 渡邉 善則 東邦大学外科学講座心臓血管外科学分野

17:09  【7】 慢性B型解離性大動脈瘤の治療方針と成績

@ 「TEVAR」 11分発表(17:09〜17:20)/ 加藤 雅明 森ノ宮病院心臓血管外科

11分討論(17:20〜17:31)

A 「手術」 11分発表(17:31〜17:42)/ 川原田 修義 札幌中央病院心臓血管外科

11分討論(17:42〜17:53)

司会 大北 裕 神戸大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科分野

17:53  閉会のご挨拶 (5分)

情報交換会(18:00〜19:30)



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