大動脈解離シンポジウム 大動脈解離シンポジウム

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=開催報告=
第5回大動脈解離シンポジウム

「第5回大動脈解離シンポジウム」は、2017年2月25日(土)横浜ローズホテルにて、第5回大会長 渡邉 善則 先生(東邦大学医学部 外科学講座 心臓血管外科学分野)のもと開催されました。 こちらでは、大会長ご挨拶、開催案内パンフレット、会場風景、演題抄録(一部;8演題)、プログラム詳細を現在掲載中です。

大会長挨拶  開催案内パンフレット  会場風景  演題抄録  プログラム詳細(タイムスケジュール含)

大会長

大動脈解離シンポジウムは、2013年2月2日(土)に大動脈解離に関する諸問題を自由に討論する場として、横浜市立大学附属市民総合医療センター井元清隆教授のリーダーシップの下で初めて開催され、年に一度横浜中華街に集う本会も、多くの参加者に支えられ第5回の開催を迎える事となりました。心臓血管外科手術で容易なものはありませんが、大動脈解離の治療は外科医だけの力ではなく、救急部門、循環器内科、放射線科など多くの治療部門との係わりがあり、満足できる結果を残すには、施設あるいは病院の総合力が問われます。治療は日々進歩し、救命的な初期治療の成績は著しく改善しています。しかしながら根治的治療が困難な大動脈解離は、遠隔期に残存解離の進展や様々な病態を併発する事が少なからずあります。大動脈解離の治療には未だ多くの難題があり、この難題を克服するために、日頃の成果を披露し合い、新たな発見を得て、明日からの医療にフィードバックできる有意義な会になる事を期待します。



第5回プログラム


第5回会場風景1

第5回会場風景2

第5回会場風景3

第5回会場風景4


■急性大動脈解離の発症直後の血圧はどうなっているか?

東京都CCUネットワーク学術委員会
圷 宏一 先生(日本医科大学付属病院・心臓血管集中治療科)、吉野 秀朗 先生、桃原 哲也 先生、渡邊 雄介 先生、橋 寿由樹 先生、薄井 宙男 先生、渡辺 和宏 先生、深町 大介 先生、萩谷 健一 先生、下川 智樹 先生、渡邉 善則 先生、荻野 均 先生、山本 剛 先生、長尾 建 先生、高山 守正 先生

【背景】急性大動脈解離(AAD)の発症直後の血圧はほとんど知られていない。3年間の東京都CCUネットワークのデータから、救急隊接触時の血圧を用いて、AADの発症直後の血圧を検討した。
【方法】ネットワークに登録されたA型AADのうち、発症直後の血圧としての救急隊接触時の収縮期血圧(First Contact Systolic Blood Pressure; FCSBP) と発症から救急隊現着までの時間が明らかな475例において、(発症15分以内:192, 16−30分:184, 31−45分:72, 46分―60分:27)の4つの時間帯における、平均FCSBP、>180mHgの割合、<90mHg の割合、を検討した。また登録されたB型AADのうち、上記の条件をみたしたB型AAD361例(118, 145, 69, 29)について同様の検討をおこない、A型AADと比較した。
【結果】A型:4つの時間帯順に、平均FCSBP(99mmHg, 110mmHg, 124mmHg, 110mmHg)と発症直後(15分以内)の平均血圧は99mmHgと低く、その後上昇するがまた低下した。>180mHgの割合 (9%, 10%, 10%, 11%)とどの時間帯も少なく、逆に<90mHg の割合(46%, 39%, 33%, 26%)が多かった。B型:平均FCSBP(178mmHg, 162mmHg, 161mmHg, 180mmHg)と特に発症直後(15分以内)の平均血圧は179mmHgと高かった。>180mHgの割合 (49%, 38%, 43%, 55%)と全体を通して高く、<90mHg の割合(11%, 5%, 0%, 0%)は発症直後が多かった。
【結論】発症直後の血圧はB型では高かったが、A型ではむしろ低かった。


■大動脈解離発症前のCT画像における大動脈壁厚の検討
 〜大動脈解離発症の予測因子と成り得るか〜

日本医科大学付属病院 放射線科
上田 達夫 先生、林 宏光 先生、斉藤 英正 先生

【背景】大動脈解離発症前のCT画像における大動脈壁厚に関して検討すること。
【対象と方法】2005年10月〜2014年9月において解離発症前に造影CTが撮像されていた20例(解離群;偽腔開存型10、ULP型10)を対象とした。非大動脈解離疾患により造影CTが撮像され、経過中に大動脈解離を発症しなかった20例を対照群とした。解離発症時のCTにてentry/ULPを同定した後、解離発症前のCTにて同部位における大動脈壁厚を測定し、病変壁厚と定義した。解離発症前のCTにおける上行、下行、腹部大動脈の壁厚を測定し、平均値を非病変壁厚と定義した。対照群では解離群の非病変壁厚と同様の方法により測定し対照壁厚と定義した。病変壁厚、非病変壁厚、対照壁厚の3群に関して比較を行った。病変壁厚に関しては、偽腔開存型とULP型に分類して比較を行った。
【結果】大動脈解離発症前の病変壁厚(2.20±0.74mm)は、対照壁厚(1.56±0.13mm)、非病変壁厚(1.58±0.22mm)と比較し有意に肥厚していた(P<0.01)。また、ULP型(2.57±0.86mm)は、開存型(1.83±0.35mm)と比較し有意に肥厚していた(P<0.05)。
【結語】大動脈解離発症前のCT画像において大動脈解離の発症起点となる病変壁は、非病変壁、対照壁と比較して肥厚していた。


■大動脈炎と解離

榊原記念病院病理・東京都監察医
村井 達哉 先生

大動脈に生じる血管炎としては高安動脈炎(TAK)と巨細胞性動脈炎(GCA)がよく知られているが、梅毒性大動脈中膜炎(LMA)、血管ベーチェット病(VBD)、サルコイドーシス(SA)なども大動脈に肉芽腫性炎を生じうる疾患として重要である。これらのうち、TAKとLMAは大動脈のVasa vasorum周囲を中心に外膜側から中膜に炎症が進展するのに対して、GCAやVBD、SAは中膜の内層においても炎症が顕著な例がみられる。また、壁破壊の程度に比してTAKやLMA、VBDは線維化の進行が高度であるのに対して、GCAやSAでは線維化の程度は比較的軽く、intimal tearからの解離の基盤となりやすいのではないかと考えられる。特に本邦では稀ともされるGCAは、演者の自験約220剖検例中5例に認められ、高齢者の大動脈解離を生じる基礎病変として無視できないものである。


■TEVAR時代を生き抜く open surgeon とは?

浜松医科大学 外科学第一講座
椎谷 紀彦 先生

 TEVAR時代にopen surgeryが生き残るためには、それぞれの得手・不得手を知り、相互に補完し協力しながら発展することが重要である(共生、共進化)。環境の変化に最も良く適応できるものが生き残るのである。
 合併症を有するB型解離においては、dynamic obstructionのmalperfusionはTEVARの得意分野であるが、static obstruction、特に時間を争うSMA虚血においては、開窓・バイパスと腸管確認を迅速にできるopen surgeryに一定の役割がある。ruptureにもTEVARの有用性が報告されているが、ongoingで出血している場合など、直達手術が有利な場合もあり、多くは開胸循環停止の手術が必要になる。TEVAR時代を生き抜くopen surgeonには、これらの手術に習熟することが求められる。
 拡張瘤化した慢性B型解離は、現状ではopen surgeryの主戦場である。多くは開胸循環停止下の手術が必要で、この手術に習熟する良い機会でもある。外科医は到達法や補助手段の進歩についてゆかなければならない。
 shaggy aortaはTEVARの禁忌であり、open surgeonはisolation法など、かかる病態に対処できる手段を持たなければならない。かかる手段はTEVARにも応用が利き、その可能性を膨らませるものでもある。
 open surgeonには、endoleakやdevice感染などのTEVAR合併症にも適切に対処できることが求められる。これには、TEVAR deviceの特性を理解し、時にはstiff wireを用いたendoaortic occlusionなどTEVARの技術も応用し、より複雑かつ広範な病変に対処できる沢山の引き出しを持つことが肝要である。


■大動脈解離術後の追加・遠隔期手術の検討

東邦大学医学部外科学講座 心臓血管外科学分野
藤井 毅郎 先生

急性大動脈解離は初期治療術後の急性期や遠隔期などに、残存解離による急速な瘤拡大やMalperfusionに対する再手術を余儀なくされる。2014年日本胸部外科学会学術調査における再手術成績は不良で、特に大動脈基部や胸部下行大動脈に関わると20%以上の死亡率になっている。海外における成績の報告は少なく、また、国内においては極めて少ない。当院におけるType A治療後の再手術成績は、急性期と遠隔期を合わせて19%で、Type B治療後は25%であり、学術調査とほぼ同様な結果であった。死亡症例の詳細は、人工血管感染と大動脈基部拡大に対するTAR & Bentall手術、左開胸弓部下行大動脈置換術で、手術侵襲に加えて体外循環確立や心筋保護法に工夫が必要な術式であった。初回術式と残存解離による複雑な病態に対しての再手術は安定した成績が得られにくいが、新たなdeviceの登場や改良、SGなどの Endovascular surgery の早期介入も有効と思われる。


■B型偽腔閉塞型急性大動脈解離におけるβ遮断薬の有用性

神戸市立医療センター中央市民病院 循環器内科
中嶋 正貴 先生、加地 修一郎 先生、古川 裕 先生

B型急性偽腔閉塞型大動脈解離におけるβ遮断薬の有効性は明らかにされていない。有効性を明らかにする目的で、当院へ1991年から2016年に入院した191例の合併症のない急性偽腔閉塞型大動脈解離例を後ろ向きに解析し、β遮断薬の有無と予後の関連性を検討した。
β遮断薬の有無と全死亡・大動脈関連死に有意な関連はなかったが、5年大動脈関連事象回避率は、β遮断薬を使用した患者群では87±4%であるのに対し、β遮断薬非使用群では61±15%(p<0.001)と有意に低かった。なお、他の降圧薬と大動脈関連事象の関連は認められなかった。偽腔閉塞型解離例においては、経過中にULPが出現した症例で予後が悪いと報告されているが、β遮断薬は、こうした症例で、残存する偽腔へのずり応力を軽減することにより、有効である可能性がある。本研究の結果から、β遮断薬はB型急性偽腔閉塞型大動脈解離において、より積極的に使用される必要があるのではないかと考えられた。


■急性B型解離に対する外科治療〜至適介入時期と方法〜

聖マリアンナ医科大学病院 心臓血管外科
宮入 剛 先生

急性B型解離で重症合併症を伴う場合(complicated acute type B aortic dissection:cABAD)では急性期のinterventionが必要となる。2011年の循環器学会ガイドラインでは外科治療がclass 1として推奨されているが、日本胸部外科学会のレジストリーによると、cABADに対するステントグラフト治療が飛躍的に増加している。2014年のESC guidelineでは、cABADに対するステントグラフト治療がclass 1で推奨されているのに対して、外科治療はclass IIbとなっている。当科でも、最近5年間のcABADに対するステントグラフト治療13例のうち、入院死亡は一例のみで良好な結果を得ている。しかし、JCVSDを用いた検討では、cABADに対する急性期ステントグラフト治療は、retrograde type A dissection(RTAD)が有意に増加している。当科でも、最近6年間のTEVAR 123例中2例、また他院施行の1例のRTADを経験している。cABADに対する急性期ステントグラフト治療はhigh riskであることを認識し、外科治療のback upが重要である。


■急性大動脈解離に対するステントグラフト

東京医科大学病院 心臓血管外科
岩橋 徹 先生

合併症を伴う急性B型大動脈解離(complicated acute type B aortic dissection:cABAD)に対するTEVARは、欧米の幾つかのRegistryにより、早期救命率、大動脈偽腔Remodelingなどの点に於いて有効性が報告されている。本邦で2014年11月、cABADに対するStent graftの承認以降、適応拡大に伴い、当施設の最近2年間では全TEVAR症例のうち28%を占めるようになった。過去6年間でcABADに対するTEVAR 36例を経験し、初期成功は91.6%で得られた。術後1年の偽腔径は偽腔開存6例で術前20.6±2.1mm、術後5.0±3.4mm (p=0.027)、ULP7例で術前14.3±1.9mm、術後0mmと有意に縮小が得られた。良好な早期成績が得られた一方で、Frank ruptureの2例がOpen conversionとなり、内1例を低酸素脳症で失った。今後、破裂症例の適応検討、および、Bridge useを含めたStrategyの考察が必要と考えられた。


12:00 受付開始

12:30〜12:55 幹事会(25分)

13:00 開会のご挨拶

13:05【1】東京都CCUネットワーク

[司会]吉野 秀朗 先生 杏林大学医学部付属病院 循環器内科
[コメンテーター]内田 敬二 先生 横浜市立大学附属市民総合医療センター 心臓血管センター

@「急性大動脈症発生の致死的状況の実態と地域社会での迅速な専門施設収容の重要性:東京都の調査から」
10分発表(13:05〜13:15)
  高山 守正 先生 榊原記念病院 副院長・循環器内科部長

=8分討論(13:15〜13:23)

A「急性大動脈解離の発症直後の血圧はどうなっているのか 東京都CCUネットワークの疫学データから」
10分発表(13:23〜13:33)
  圷 宏一 先生 日本医科大学付属病院 心臓血管集中治療科

=8分討論(13:33〜13:41)

13:41【2】画像・病理

[司会]志水 秀行 先生 慶應義塾大学 心臓血管外科
[コメンテーター]高山 守正 先生 榊原記念病院 副院長・循環器内科部長

@「大動脈解離発症前のCT画像における大動脈壁厚の検討」 10分発表(13:41〜13:51)
  上田 達夫 先生 日本医科大学付属病院 放射線科

=8分討論(13:51〜13:59)

A「大動脈炎と解離」 10分発表(13:59〜14:09)
  村井 達哉 先生 榊原記念病院 病理

=8分討論(14:09〜14:17)

14:17【3】 特別講演

[司会]本 眞一 先生 三井記念病院 病院長

「大動脈解離診療の進歩と問題点」 15分発表(14:17〜14:32)
  安達 秀雄 先生 自治医科大学附属さいたま医療センター 心臓血管外科

=8分討論(14:32〜14:40)

14:40【4】 招請講演

[司会]井元 清隆 先生 横浜市立大学 名誉教授

「TEVAR時代を生き抜く open surgeon とは?」 15分発表(14:40〜14:55)
  椎谷 紀彦 先生 浜松医科大学医学部附属病院 第一外科

=8分討論(14:55〜15:03)

15:03〜15:18 コーヒーブレイク (15分)

15:18【5】 遠隔期

[司会]上田 敏彦 先生 東海大学医学部外科学系 心臓血管外科学
[コメンテーター]圷 宏一 先生 日本医科大学付属病院 心臓血管集中治療科

@「急性A型解離緊急手術症例の遠隔期、何がおきているか」 10分発表(15:18〜15:28)
  内田 敬二 先生 横浜市立大学附属市民総合医療センター 心臓血管センター

=8分討論(15:28〜15:36)

A「遠位大動脈の遺残解離病変に対する治療」 10分発表(15:36〜15:46)
  志水 秀行 先生 慶應義塾大学 心臓血管外科

=8分討論(15:46〜15:54)

B「大動脈解離術後遠隔期追加手術」 10分発表(15:54〜16:04)
  藤井 毅郎 先生 東邦大学医学部 外科学講座 心臓血管外科学分野

=8分討論(16:04〜16:12)

16:12【6】 急性B型解離

[司会]安達 秀雄 先生 自治医科大学附属さいたま医療センター 心臓血管外科
[コメンテーター]林 宏光 先生 日本医科大学付属病院 放射線医学

@「急性B型偽腔閉塞型大動脈解離例に対するβ遮断薬の有用性」 10分発表(16:12〜16:22)
  中嶋 正貴 先生 神戸市立医療センター中央市民病院 循環器内科

=8分討論(16:22〜16:30)

A「急性B型解離に対する外科治療〜至適介入時期と方法〜」 10分発表(16:30〜15:40)
  宮入 剛 先生 聖マリアンナ医科大学 心臓血管外科

=8分討論(16:40〜16:48)

16:48【7】 急性B型解離ステントグラフト

[司会]加地 修一郎 先生 神戸市立医療センター中央市民病院 循環器内科
[コメンテーター]渡邉 善則 先生 東邦大学医学部 外科学講座 心臓血管外科学分野

@「急性B型解離に対するステントグラフト治療」 10分発表(16:48〜16:58)
  岩橋 徹 先生 東京医科大学病院 心臓血管外科

=8分討論(16:58〜17:06)

A「急性B型大動脈解離による腹部大動脈真腔閉塞に対し真腔内ステント留置により急性期手術を回避した1例」
10分発表(17:06〜17:16)
  芝田 匡史 先生 日本医科大学付属病院 心臓血管外科

=8分討論(17:16〜17:24)

17:24 閉会のご挨拶

17:30〜19:30 情報交換会



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